大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和49年(ネ)138号 判決

控訴人

小泉正男

右訴訟代理人

新井彰

被控訴人

日本通運株式会社

右代表者

澤村貴義

右訴訟代理人

山田重雄

外二名

主文

本件控訴を棄却する。

被控訴人は控訴人に対し、原審認容の金額の外、更に金二六一万四、一四四円並びにその内金二五八万八、五四四円に対する昭和四七年七月一九日から完済に至るまで年五分の金員及び内金二万五、六〇〇円に対する昭和四八年一一月九日から完済に至るまで年五分の金員を支払え。

控訴人が当審で拡張したその余の請求を棄却する。

控訴費用は、これを五分し、その一を被控訴人、その四を控訴人の負担とする。

この判決は第二項に限り控訴人において金五〇万円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実《省略》

理由

第一当裁判所は主文第二項の限度において控訴人の請求を正当と判断するものであり、その理由は左記1ないし6のとおり補正するほか原判決の理由第一ないし第四と同一であるから、これを引用する。

1  原判決九枚目表五行目から同一一枚目表八行目までを次のとおり改める。

「一 休業損害及び給与・賞与の減収による損害

(1)  昭和四六年七月一日から同年一二月末日までの損害

〈証拠〉によると、控訴人は、本件事故による頭頸部外傷症候群(その随伴症と認められる性器障害も含む)及び腰部挫傷について、昭和四六年三月一四日関東労災病院において、労災保険身体障害者等級第九級に相当するものとの診断を受けたが、現実には、頸椎捻挫後遺症の治療のため休職し、同年六月一九日より埼玉県川口市にある菊地診療所に2.4日に一回の割合で通院し、本件事故前の職務であつたバス運転の業務につくことができず、同年一〇月初めには勤務先の国際興業株式会社に復職の希望を出したが、同会社が用意してくれた誘導員の職種も会社の求める勤務条件に応えることが健康及び治療上不可能であると判断されたので、同年一〇月三一日やむなく同会社を依頼退職し、同年中は結局右治療等のため就労することができなかつたことが認められ〈る。〉

ところで、〈証拠〉によると、控訴人が本件事故に遭遇せず従前どおり国際興業株式会社のバス運転手として勤務できたならば、昭和四六年七月一日より同年一二月末日まで一か月平均金九万七、一八三円の給与と同年下期の賞与金一四万四、八八〇円との合計金七二万七、九七八円を得られたはずであること、控訴人が昭和四六年四月四日から同年九月末日までの間一八〇日間に、国際興業健康保険組合から本件むちうち症に対する傷病手当として金二五万九、二〇〇円の支給を受け、従つて同年七月一日以降(九二日分)の同手当として金一三万二、四八〇円の支給を受けたことになることが認められる。従つて、右事実によれば、控訴人は昭和四六年七月一日から同年一二月末日までの休業により差引き金五九万五、四九八円の損害を蒙つたことになる。

なお、控訴人は右の傷病手当について、休業補償の算出にあたつて控除すべきでないと主張する。しかしながら、右傷病手当は、社会保険に属する健康保険法に準づく保険金の性質を有するものであつても、本件事故により控訴人が得た給与保障的利益であり、〈証拠〉によると、被控訴人は昭和四八年四月一四日国際興業健康保険組合から右傷病手当相当額を健康保険法六七条に基づいて求償され、これを支払つたことが認められ、右傷病手当は、究極的には被控訴人の負担においてなされているものであるから、休業損害の算定にあたつてこれを控除するのが相当である。従つて控訴人の右主張は容認することができない。〈後略〉

(外山四郎 篠原幾馬 鬼頭季郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例